見極めたい、“後悔”しないためのこだわり粗大ゴミ
IT革命が企業リストラの進展というタイミングと合致した点である。
米国企業のリストラは80年代と90年代では性格が異なる。
80年代は財政赤字と金融引き締めというポリシーミックスにより異常高金利とドル高が生まれた。 この結果、米国の国際競争力の低下から製造業は過剰設備と過剰雇用の削減という後ろ向きのリストラを余儀なくされた。
90年代のリストラは製造業だけでなく銀行などサービス産業にまで広がっている。 そこでは単に後ろ向きのリストラではなく、新規のIT投資を行うことでオフィスワークの効率化を実現、積極的にコスト削減を実行している。
メガコンペティション(大競争)時代に備えて米企業が競争力強化の観点から積極的にIT投資を進めたことである。 コスト削減はもちろんのこと、ITを駆使した新商品開発、品質管理、効率的な生産プロセスの実現などで陳腐化した米国産業というイメージは一掃されたのである。
さて、それではIT革命が米国の生産性を飛躍的に上昇させて、いわゆるニューエコノミーを実現させたと結論づけても良いのだろうか。 職場での生産性が上がったという声と矛盾する結果はどこからもたらされているだろうか。
1つには製造業の生産性の上昇は統計に素直に反映されるが、サービス産業の生産性の上昇は統計に反映されにくいということが言えると思われる。 すなわち、製造業では工場の生産工程にロボットを導入した場合は、労働者数が減ることと、生産ピッチが上がることから、生産性の上昇が統計にストレートに反映される。
ところが、サービス産業、あるいはオフィスワークについてはパソコン、通信機器の導入による仕事の正確性や密度の濃さ、インターネット使用による情報量の増大などが得られるが、それで雇用者1人当たりの売上高が増加することには必ずしもつながらない。 確かに仕事の効率という意味で生産性は上がっているだが、提供されるサービス価値の上昇に見合って価格が上昇しているとは限らないからである。
生産性統計にはうまく反映されていないかもしれないが、IT投資により米国産業の競争力基盤が強化されているは間違いないだろう。 金融ハイテクを駆使した商品開発能力、デリバティブ等の資産運用手法の開発などは米国の独壇場であり、このような優位性は金融に限らず、あらゆる業界の競争力強化に役立つことになるのは明らかだ。
GリーンスパンFRB議長は、IT投資は潜伏期間を経て米国の生産性の上昇につながってくると述べているが、同感である。 米国はIT革命という時代の波を正確にキャッチして、情報通信分野で絶対的な優位性を占めようとしている。
これで来るべき21世紀も米国の時代というわけである。 このような国家戦略が企業トップにも浸透しているがゆえに、各企業はIT投資を戦略的に進めて徹底したリストラを断行している。
しかも、情報通信関連の技術革新のスピードは恐ろしく速い。 スクラップーアンドービルドを繰り返し、常に最新の情報通信機器で装備しておくことが必要である。
ということは情報通信関連の設備投資は除却率が高いので、景気の波に左右されないで伸び続ける性格を有している。 経済成長の持続性を高めている誘因の1つと考えられる。
米国経済再生のためには政策的努力だけでなく民間部門の自助努力が必要であるのは言うまでもない。 経済政策は経済活動のフレームワークを規定するものであり、経済の推進役はあくまでも民間企業だからである。
政策当局が経済再生計画を実行することで物価安定と財政均衡というフレームワークができた。 さらに規制緩和で民間の活動範囲が拡大することになった。
ここに新たにIT革命、経済のグローバル化という時代の波が押し寄せたのである。 このような企業を巡る経済環境の激変に際して、米企業はIT投資を積極的に増やしてリストラ効果を高め、また他社との合併.買収(M&A)を実現することでみずからの体質を強化し、収益の拡大につなげていこうとしている。
このような企業努力の結果、米国民所得に占める法人企業の利潤シェアは1990年代に入ると長らく続いた8〜9%台のレンジから抜け出して97年には1%を超えるほどの大幅な改善を見せている。 90年代のリストラは製造業からサービス産業にまで及んだのが特徴である。
象徴的なのは金融業界である。 80年代後半に不動産バブルがはじけたことが契機となってC畜貸付組合(S&L)、商業銀行などが痛手を被り、金融不安が広がったことが伏線となっている。
政府は金融危機回避のためにS理信託公社(RTC)を設立してS&Lの整理.清算を実行、FRBは低金利政策を進めて銀行の収益構造を改善させ、金融機関自身は従業員の大幅な削減に動いた。 このリストラを技術面でサポートしたのがIT投資であり、バックオフィスの人員削減、効率化のためのコンピュータ化が進められた。
IT投資によるリストラの結果、米国の主要企業の売上高に占める人件費の割合は90年代に入って着実に下降している。 企業内で行う競争力強化の運動をリストラと呼べば、M&Aは他社との合併.買収を通じて自社の競争力を強化しようというダイナミックな動きである。
80年代以降、M&Aが盛んになった理由は第1に国際競争激化への対応、第2に規制緩和で独禁法の制約を受けにくくなったこと、第3に負債に有利な税制などが上げられる。 80年代後半になると真面目なM&Aは影を潜め、マネーゲームの一環としてブーム化することになってしまう。
特にレバレッジドーバイアウト(LBO)という資金調達の手法が編み出されたことから、小さい会社が自社の数倍もの自己資本を有する大会社を乗っ取ることが可能になり、マネーゲームに拍車がかかってしまった。 この顛末は乗っ取る側、防ぐ側双方に巨額の負債が残るという惨めなものであった。
90年代に入るとM&Aはリストラのケースと同様に製造業だけでなくサービス産業にも広がっていった。 特に銀行.証券などの金融分野では大型の合併が相次いだ。
Kミカル.バンクとCース.マンハッタン.バンクの合併、Sロモン.ブラザーズとSミスバーニーの合併、TラベラーズとCティコープの合併など枚挙にいとまがない。 この合併を通じて多数の従業員が解雇された。
M&Aは自社の弱点を補完することを目的とするが、当然のことながら重複する分野ではリストラの大なたがふるわれる。 感心するのはこのようなリストラ、M&Aが未曾有の景気上昇局面においても引き続き実行されている点である。
経済のグローバル化は時代の流れであり、国際間の競争は益激化する方向にある。 このような21世紀の大競争時代に打ち勝つためには、第1にIT投資を積極的に推進して、絶えずコスト削減と新規商品開発を行うことが必須である。
第2は国内に止まらず、グローバルな戦略的企業連携を構築することが必要になってくるだろう。 すでに、自動車業界、航空会社、金融業界ではその動きが活発化してきており、米企業はその中軸としてイニシアティブを発揮している。
米企業は80年代初めまでの生産性の低い、不活発な状況から完全に脱却して、最もダイナミックな活動を続けている。 米国経済再生計画の実行により米企業は活性化したのである。
米国経済が再生したことを示す指標の1つが株価だと言える。
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ところが、サービス産業、あるいはオフィスワークについてはパソコン、通信機器の導入による仕事の正確性や密度の濃さ、インターネット使用による情報量の増大などが得られるが、それで雇用者1人当たりの売上高が増加することには必ずしもつながらない。 確かに仕事の効率という意味で生産性は上がっているだが、提供されるサービス価値の上昇に見合って価格が上昇しているとは限らないからである。
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